これは面白い>85インチ4Kテレビ価格20万 円のカラクリ。新興メーカー「オプトスタイル」 の社長&仕掛け人を直撃! 

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近年の4Kテレビ価格破壊の荒波とは無縁だった国内最大の85インチクラスの市場に、ついに大嵐が吹き荒れた! 前代未聞の爆安巨大テレビはなぜ実現できたのか?

【写真】アルミダイキャスト製のフレーム

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4K対応の液晶テレビが市場を本格的ににぎわせ始めたのは、東京五輪開催が決まった2013年頃。当時は「1インチ1万円」が価格の目安で、60インチなら50万円超えが普通だった。

ところが17年6月、ドン・キホーテが50インチの4K液晶テレビを5万4800円(税抜)という”驚安(きょうやす)”価格で発売。ここから価格崩壊は加速し、現在では60インチなら大手メーカーで約15万円〜、ジェネリック家電メーカーで10万円あたりが勝負どころだ。

しかし、より大型となると話は別。75インチは大手で40万円、ジェネリック各社でも20万円をギリギリ切る価格がやっと。そして家庭用最大クラスの85インチ以上となると、発売はソニーとLGの2社のみ、価格は50万円前後〜という孤高の領域だ。

この戦場に昨年10月末、オプトスタイルという聞き慣れないメーカーが殴り込みをかけた。製品シリーズ名は「OPTVISION(オプトビジョン)」。ネット専売の85インチモデルのお値段、なんと20万円(税別)!!

このニュースは家電業界を揺るがせ、筆者の心も大いに揺らいだ。何しろその直前に、ソニーの85インチ4K液晶テレビを50万円以上で買ったばかりだったからだ……。

いったいなぜ、こんな「爆安巨大4K液晶テレビ」が実現したのか?

■ドンキの”驚安”にヒントを得たスタイル
オプトスタイル社への取材は、神奈川・海老名(えびな)の某倉庫で行なわれた。西日本で標準となっている「本間サイズ」の畳1枚分に当たる85インチのテレビをデモするスペースが、東京・赤坂の同社事務所にはないからだ(もちろん狭めのエレベーターでは運べない)。

案内された会議室にいたのは、同社の黒澤明宏社長と、このテレビプロジェクトの仕掛け人である執行責任者のA氏(名前&顔出しNG)。何やら秘密のにおいを放つA氏も気になるが、まずは黒澤社長に話を聞こう。いったい何者ですか? 大手家電メーカーの早期退職組とか?

「いえ、私はもともと銀行マンなんです。退職後はコンサルをしていたんですが、そのなかでAさんと出会い、この家電ビジネスには勝算があると起業に至ったわけです」

話を聞きながら、85インチの現物をじっくりと拝見。わかってはいたが、とにかくデカイ! そして驚くのが、想像以上の質感の高さだ。

多くのジェネリック家電メーカーのテレビは、コストダウンのために同じ部品やフレームを共用している。しかし、これは見たことがないフレームとスタンドだな……と触ろうとすると、A氏がうれしそうに声をかけてきた。

「気づきましたか! ダイキャスト製のオリジナルです」

聞けば、85インチという規格外のサイズは共用できる既存のフレームがなく、輸送中や設置中の事故・破損を防ぐため、丈夫なアルミダイキャスト製にしたとのこと。逆に裏側を見ると、そこにはシンプルな樹脂製のカバー。このコストのメリハリのつけ方が圧倒的な低価格の秘密か?

「17年にドン・キホーテさんが”驚安”の4Kテレビを爆発的にヒットさせたことがヒントになりました。明確なコンセプトを作り、ファブレス(自社では工場を持たず外部に発注する経営スタイル)で製造し、販売する――それが可能なら、自分たちでも家電ビジネスを成り立たせることができます」(A氏)

ただ、普通の営業マンなら「ウチもドン・キホーテさんに取り扱ってもらいたい」と思うはず。そこで「自社でやれる」という発想に至ったのは、コストカットの達人・黒澤社長と、製品パッケージングの達人・A氏の”コンビ芸”によるものだった。

「実は、4K液晶テレビって部品点数が少ないんです。液晶パネル、エンジン、チューナー、電源、アンプ、スピーカー、外部パネルにスタンド。数えるほどです。

最先端と思われがちな倍速エンジンだって、ここ5年くらい大して進化していない。あまり細かく言うと商売がやりにくくなりますが(笑)、パネルは世界最大の生産メーカー製、エンジンは国産です」(A氏)

「日本の家電の流通は特殊です。生産は中国で、そこから商社、卸(おろし)問屋、販売店を通り、やっと消費者。これらをすべて省けば安くなると思いました。

また、各分野のスペシャリストに任せられる部分はアウトソーシングし、自社社員を極力減らす。流通経費に開発経費、営業経費に固定経費、聖域なしの全面コストカットです」(黒澤社長)

■75インチも65インチも、実は衝撃的に安い!
それにしても、いかに安いとはいえ85インチの超ド級サイズに需要はあるのか?

「まずはリモートワークでの企業需要を見込みました。Zoom会議などで何人もの顔が並ぶと、普通の画面サイズじゃ表情もわからない。価格が安ければ、より大きいモニターに必ず需要は生まれると考えたわけです」(黒澤社長)

このテレビのおかげで居眠りできなくなったサラリーマンも多いかも(笑)。

では、肝心の性能は? ソニーの85インチを自腹で買ったばかりの筆者の正直な感想は……「ああ、こっちを買えばよかった!」だ。

忖度(そんたく)なしでソニー製品と比べると、画質は85%、音質は60%、デザインや質感は70%といったところ。さすがに性能で上回ることは期待できないが、画質は発色の甘さが若干ある程度で「健闘」の範囲内だし、音質はもし気になるなら外部スピーカーで補うこともできる。

これで30万円以上、2.5倍以上の価格差は大きすぎる。ケタ違いの反応速度が要求されるパソコンゲーム用モニターなどの特殊用途以外なら、50万円以上払えるなら「OPTVISION」を2台買ったほうがいい(置く場所ないけど)。

ただ、現実的にはひとり暮らしの部屋なら、75インチが限界という人も多いのでは?

「ええ、実際にコンシューマー(個人消費者)に売れているのは75インチモデルです。税込9万9990円で、ウチの主力機種といえる自慢のモデルです」(黒澤社長)

85インチの迫力に目を奪われていたが、75インチの4K液晶テレビが10万円以下というのも衝撃! ちなみに65インチは5万9000円(税別)と、こちらも破格だ。

ただ、もし部屋にスペースがあるなら、ぜひ85インチにチャレンジしてほしい。オリンピアンたちを実物大、いやそれ以上のサイズで見ることは最高のぜいたくだ。

この”85インチショック”で、21年の家電業界には新たな競争が生まれること必至。楽しみな年になりそうだぞ!

取材・文・撮影/近兼拓史

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