コロナをきっかけにあぶり出し>旧帝大で国家プロジェクトに入り込む「中国人研究者」たち 日本の技術が中国で軍事転用も

コロナとトランブ大統領のおかげで、中国の野望、野心があぶりだされていますよね。

禍転じて福となす、人間、万事塞翁が馬で、正しい情報に触れるチャンスだと思います。

【櫻井よしこ】孔子学院と日本学術会議【反町理】

 

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入国の緩和で「千人計画」は再び拡大か

習近平国家主席(東方経済フォーラムHPより)

 中国政府が推進する「千人計画」は、世界中の優秀な研究者を好待遇で集めるプロジェクト。多くの日本人研究者もこれに招かれているが、反対に中国人研究者も日本に渡り、最先端の研究プロジェクトに参加している。千人計画に参加する東大名誉教授に「知財流出を防ぐ手立てはない」とまで言わせる実態とは。  ***

 中国大陸と我が国との往来が、本格的に再開の兆しを見せている。11月1日から、中国、韓国など11の国と地域からの入国者は、羽田や成田空港などでの新型コロナウイルスの検査を受ける必要がなくなったのだ。水際対策の緩和で、再び海の向こうの人々との交流が活発になれば、「中国千人計画」の更なる拡大が懸念されるのは言うまでもない。  日本のみならず欧米など西側諸国の科学者たちを招聘し、中国で研究に従事させる。結果、さまざまな知財を吸い取らんとする謎に満ちた極秘プロジェクトの実態を、本誌(「週刊新潮」)はこれまで3度に亘って報じてきた。実際に我々の取材に応じてくれた参加者は、東大、京大など旧帝大の教授たちや、研究予算の削減などで日本にポストがなく大陸へと渡った若い研究者など。彼らの声に耳を傾けて見えてきたのは、中国の強(したた)かな戦略だった。  今回紹介するのは、これまでと異なる形で日本の知財を吸収しようとするやり口――。つまりは、我が国に直接乗り込まんとする中国の姿である。

「中国人の学生を東大に入れた」

中国人留学生が集う旧帝大

「中国に行く日本人よりもっとずっと大きな問題は、日本で研究する中国人の存在だと思います」  とは、「千人計画」に参加した70代の東京大学名誉教授。絶対匿名を条件にその実情を語るのだ。 「日本で国家プロジェクトに参加するような最先端の大学の研究グループでは、実験を担う博士課程の院生の多くが中国からの留学生です。このような現実の中で、日本の科学技術の海外流出を防ぐ手段はまず考えられません。その原因は、日本では21世紀に入ってからずっと、優秀な学生が大学院に進学してこないという状況が続いていること。それほど遠くない将来、日本から漏洩するような知財はほとんどなくなっているでしょう」  そう口にして、彼の国へと渡った経緯を振り返る。 「中国の大学へ行ったのは、定年退職を前にして国内での良い話がなかったから。そうこうするうちに、東大の博士課程を経て中国の大学教員になった教え子から招聘を受けた。条件は組織、設備、研究費など、どれをとっても日本では絶対に考えられないくらい良かった。もちろん周囲から知財流出の危惧についてはアドバイスを受けましたが、私の研究分野は環境バイオ。中国の汚染された環境を修復するために役に立つことは、なんの問題もないと考えました」  この分野では、中国の実力が上がりつつあるそうで、 「若手研究者の数、研究費の差などからみて、多くの研究分野で日本がこれから中国と対抗していくのはとても大変です。遣唐使の時代に戻るとは思いませんが、安全保障と関係が薄い分野では、日中の科学技術交流は日本が生き残るために必須と考えます。もはや『知の流出』が避けられない以上、国際交流なしに国家の存続はあり得ません。日本が『知(血)』の純潔を守ろうとすれば、それは国家衰退への道だと信じます」  事実、日中の架け橋になっていると自負するのだ。 「すでに日本に行きたいという中国人の学生を何人か東大に入れていますし、他にも欧米に留学していった教え子もいます。10年後に彼らが中国に戻ってきて、母国の環境問題解決に貢献するのが今一番の楽しみ。日本では有望な中国人が多く育っています」  中国からすれば、「千人計画」で一流大の研究者を招聘すると、将来が嘱望される中国人を日本に送り込む窓口にもなってくれる。まさに一石二鳥というわけだ。

日本の叡智が中国の軍事研究を推進

 憂うべきは、多くの中国人を抱える東大に、「国防七校」に絡む留学生らが在籍していることだ。「国防七校」とは、中国人民解放軍との繋がりが深く、ミサイルや戦闘機など軍事兵器の研究開発に力を入れている大学だ。ちなみに、経産省は大量破壊兵器などの開発への関与が懸念される海外の研究機関を「外国ユーザーリスト」として公表。「国防七校」では、北京航空航天大学と哈爾濱(ハルビン)工業大学が掲載されている。なお本誌ではこれまで、「千人計画」でこれらの大学に招聘された日本人学者の証言も紹介してきた。  ざっと東大の理工系研究室のホームページを確認しただけでも、北京航空航天大のロボット研究所や飛行機設計学科、また哈爾濱工業大の出身者が所属していることが見てとれる。東大以外の旧帝大でも、JAXAの公募プロジェクトで航空機に関わる研究を行う教授は、北京航空航天大の出身者を受け入れていた。  さらに北京航空航天大や哈爾濱工業大などの教授の経歴も辿ってみれば、幾人もが、東大や京大、東工大などへと留学していた旨を、誇らしげにウェブ上で公表してもいるのだ。  その最たる人物として挙げられるのが、2016年に中国共産党創立95周年大会で、習近平国家主席から「中国の航空事業に多大な貢献をした」として表彰された北京航空航天大の宮声凱教授(64)だろう。  彼は1988年に東工大で博士号を取得。世界に先んじて大型戦闘機に転用できるエンジン技術を完成させたとされるが、所属する北京航空航天大のウェブサイトでは、こう紹介されている。 〈80年代初頭から宮声凱は日本に公費留学し、94年に帰国後は北京航空航天大の材料科学・工程学院院長に就任した。帰国した頃の心境について、宮教授は語った。「科学に国境はないと言いますが、しかし私は思うのです。科学者には祖国があり、中国人は自分の国のために貢献すべきだと」。国家的な課題に直面すると、一人の優秀な共産党員として、宮声凱は一度も諦めることはなかった〉 〈「我々は宮先生というリーダーの下、祖国の航空事業の発展のため、国家戦略に応じて、国防に奉仕し続ける」。これは宮声凱、またはその他の研究員の心の声であり、北京航空航天大学の研究者の真実の姿を映している〉  日本の血税により磨かれた叡智が、中国の軍事研究を前進させていたのだ。 「週刊新潮」2020年11月12日号 掲載

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