大事な娘にも読んで欲しい記事>緊急避妊薬(通称:アフターピル)避妊に失敗…眠れぬ女子大生を救った、彼の行動・薬局と病院の 対応

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緊急避妊薬(通称:アフターピル)を手に入れやすくしてほしい! そんな活動がさらに盛んになっている。産婦人科医の遠見才希子さんやNPO法人ピルコンの染矢明日香さん、#なんでないのプロジェクトの福田和子さんらが中心になって発足した「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」が集めた署名は、8月21日現在8万7000人以上。7月21日には6万7000人もの署名と要望書を厚労省に提出した。これを機に多くのテレビ番組でも特集され、なぜ日本ではごく普通の権利が許されていないのか議論を呼んでいる。緊急避妊薬が簡単に手に入ると安易な考えに流れるという主張がなぜまかり通るのか。

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海外に行くと、特に若い人には無料で配布する国もあり、日本との「差」に愕然とさせられる。藤木桜子さんもその一人だ。藤木さんが「差」を実感した体験を寄せてくれた。

最後に外れてしまった…
多分大丈夫、多分大丈夫、そう思い込もうとしても眠れなくなる…Photo by iStock

これは10年ほど前、とある欧米の国に留学していた時の話です。当時のわたしは大学生で、留学先で知り合った現地学生と付き合っていました。そして他の多くの大学生カップルと同じように、私たちは体の関係に発展しました。もちろん、コンドームで必ず避妊をして行為に及んでいます。

しかしある日の夜、行為が終わって彼が抜いた時、コンドームが外れてしまいました。私は実際に見てはいないので、外れるということが具体的にどういうことかはわかりません。彼が言うには、「精子はコンドーム内にあるから多分大丈夫だけど抜いた瞬間に外れてしまった」とのことです。

多くの日本人女性と同じように避妊は男性に任せていたので、私はその言葉を信じるしかありません。「多分大丈夫だろう」と思うことしかできませんでした。

しかしそんなことは初めてだったので眠れるわけもなく、異国の地で不安な気持ちのまま眠りにつきました。

彼が「緊急避妊薬を買いに行こう」
クロワッサンの味がしなかった…Photo by iStock

翌朝早く、普段は寝坊して授業に駆け込む彼が身支度をしていました。「心配だから緊急避妊用のピルを飲んでほしい。薬局に行こう」と言います。

いつもはお調子者の彼の真剣な様子に怖くなってしまい、私は「昨日大丈夫だって言ってたし大丈夫だよ」と首を横に振りました。驚くかもしれませんが、男性がピルを勧め、女性である私がそれを断ったのです。

理由は、不安だったから。矛盾しているようですが、妊娠が怖いからこそ、ピルを飲むことが怖かったのです。現実から目をそらして「多分大丈夫」という希望にすがることで、なかったことにしようとしていました。

それでも彼は「何かあったら傷つくのは桜子だ」と言い、渋る私の手を引いて薬局に向かいました。その国では薬局で緊急避妊薬を買えることを、その時初めて知りました。

調べたところ、ピル(緊急避妊薬)の服用前に何か食べてないといけないと何かに書いてありました(編集部注・実際はそうとは限りません)。彼が薬局への道すがらクロワッサンを買ってくれましたが、砂を噛んでいるようで、何の味もしなかったのを覚えています。

「あなたの身を守るために大切なの」
薬局では、50代か60代くらいの、細身で親切そうな薬剤師の女性が対応してくれました。何も言わない私に代わり彼が説明すると、彼女はすぐにコップ一杯の水とピル(緊急避妊薬)一錠を持ってきてくれました。「今すぐ飲んで」と。そこで私には持病があって薬を服用していることを説明すると、「ここで緊急避妊薬を売ることはできるけど、念のため向かいの産婦人科に行って、確認した方がいい」と勧められました。

産婦人科なんて、生まれてから一度も行ったことがありません。妊娠するまでお世話になることなんてないと思っていた場所です。朝ピルを飲むことを拒んだのと同じように、私は泣きながら「行きたくない」と言いました。産婦人科に行くことで、大ごとになってしまうのが怖かったのです。

そんな私の手を、女性店員はそっと握ってくれました。「あなたの身を守るためなの。大事なことだから勇気を出して」と。もともとは一緒に薬局に行った後そのまま大学に行く予定だった彼は、「授業を休む」と言って付いてきてくれ、人生で初めて産婦人科に行きました。

怒られも責められもしなかった
産婦人科に行くことすら怖かった藤木さんだが、薬局の女性も意志も、当然のように責めることもなく親身にきちんと相談に乗ってくれた。「若い女性が緊急避妊薬だなんて」という態度はみじんもなかった Photo by iStock

産婦人科の受付で、彼は「緊急避妊用のピルのために薬の飲み合わせを確認したい」と言いました。どんな返事が返ってくるんだろう、怒られたりするかもしれない。そうビクビクしていましたが、受付の女性は「それは昨晩のことですか? 何の薬を服用していますか?」といくつか質問するだけで、「では待合室へどうぞ」とごく普通に対応してくれました。

待合室は他の病院よりも少しカラフルで、子供が遊ぶスペースが多めに取られています。私の他には乳幼児連れの女性一人、妊婦さんが一人。幸せそうな二人を横目にどうしようもない不安が押し寄せてきて、気づいたら再び涙をこぼしていました。私はいったいどうなってしまうんだろう?
40分ほどで待ったでしょうか。名前を呼ばれて診察室へ。30代くらいの女性の医師で、事情を説明したらすぐに「ピル(緊急避妊薬)を飲んでも大丈夫」と言ってくれました。

その後、すぐに向かいの薬局へ戻りました。最初に対応してくれた店員さんは取り込み中でしたが、ジェスチャーで「少し待っていて」と伝えてくれたので、他の店員さんに断りを入れて少し待つことに。

私たちの番になると、彼女は心底ほっとしたように「戻ってきてくれてよかった」と言ってくれました。私が怖くなって途中で逃げてしまうんじゃないかと思っていたようです。

「ピル(緊急避妊薬)を飲まなきゃ、と思っても、その途中で心が折れちゃう人が多いの。薬局には来ても他のお客さんがいると帰っちゃったり……。でもちゃんと来てくれたんだね」

そんな優しい店員さんのおかげで、私は無事、緊急避妊用のピルを買って服用することができました。

「避妊失敗の可能性」から目をそむけたくなる
欧米では、思春期のころから行きつけの産婦人科があるパターンが多い。生理のことも含めて、女性が自分の健康を守ることが当然であり、女子学生でも産婦人科にかかることも当たり前のことなのだ Photo by iStock

彼女が言う通り、途中で逃げ出す女性は多いと思います。私も、彼がずっと隣にいてくれなかったらどこかで心が折れてしまっていたでしょう。

産婦人科や薬局で「緊急避妊用のピルを」と言う度に、避妊失敗の可能性を目の当たりにしなくてはいけません。それが怖いのです。

ピルを飲むべきだとは頭で理解しています。しかし非常事態に陥ったことで、「きっと大丈夫」と無根拠な希望にすがって、現実逃避したくなってしまうのです。未払い請求書に気付きながらも開封せず無視したり、テストの点が悪いことを親に黙っていたり、といった時と同じ心境でしょうか。

また、産婦人科は偏見が多い場所でもあります。以前、「女子高生が制服で産婦人科に入るのを見た」というTweetが話題になったことがありました。Tweet主はそれをネガティブに捉えていてので、「女性特有の病気や生理不順などで高校生が通院することはおおいにありえる」という反論が多く寄せられていた記憶があります。

さらに、日本は性にオープンな国ではないので、緊急避妊薬を使う女性は後先考えずに性行為に及ぶふしだらな女、というレッテルを貼られかねません。そういった様々な要因が、産婦人科へ行く足を鈍らせるのです。しかも、日本では約6000円から20000円ととても高額で、若い世代には手を出すことはより難しくなります。

誰のために必要なものなのか
日本では7月21日、医師の処方箋がなくとも緊急避妊薬を薬局で買えるよう、国に要望書が提出されました。それをきっかけに緊急避妊薬についての議論が活発になっています。

コロナ禍で10代少女からの妊娠に関する相談件数も増えていることもあり、この要望書にはインターネット上で約6万7000人もの署名が集まりました。ニュースで話題になってから署名は急増し9万人に上る勢いなのだそうです。しかし、「性教育が遅れているため誤用される可能性がある」「事後ピルを飲めばいい、と安易な性行為に繋がる」といった理由で反対する人もいます。

そういったリスクもあるかもしれません。しかしなぜ、望まぬ妊娠で女性やその周りの人が苦しむというリスクから目をそらすのでしょうか。

当然の権利を阻む理由は?
緊急避妊薬入手のハードルを上げるより先に必要なのは、幼い頃からのきちんとした性教育ではないだろうか Photo by iStock

薬の誤用は防ぐべきですが、だからといって本来届くべき相手に薬が届かなくなるのは本末転倒です。誤用のリスクへの対処法は、薬を手に入れるハードルを設けるのではなく、正しい知識を伝えることだと思います。薬を手に入れやすくすること、正しい知識を伝えること、両方同時に進めることが重要です。

「緊急避妊薬があるから」と軽々しく性行為に及ぶことをおそれる発言が多く見られますが、安全に気を配ったけれど事故が起こってしまい緊急避妊薬が必要になった人もいます。バイアグラは即座に承認されましたが、その時「勃起薬が安易な性行為につながる」という批判がなかったのはなぜでしょうか。「男性への性教育が遅れているから誤用のリスクがある」と慎重にならなかったのはなぜでしょうか。

こういう話になると、決まって「妊娠して困るなら性行為をするな」という人が現れます。怪我に苦しむスポーツ選手に対し、「怪我をしたくなければスポーツをしなければいい」と言う人はいません。しかし緊急避妊薬においては、「妊娠したくなければ性行為をするな」と言われてしまうのです。それはなぜでしょうか。妊娠は女性だけの話だからでしょうか。妊娠は女性一人でするものでしょうか。

気を付けてもトラブルは起こりうる
女性はひとりで妊娠はしない。「若い女性が」というが、性行為とはどういうものなのか、どんなリスクがあるか、人の感情を大切にするとはどういうことなのか。それを幼いころから学び、大切に考えるための性教育がなにより必要だ

20代の初体験の平均年齢は、18歳と言われています(『SAGAMI』)。一定年齢以上の人間が、合意の上で安全に気をつけて行う性行為を禁止するほうが不自然です。

しかし、どんなに気をつけていてもトラブルが起こることはあります。その時のセーフティーネットが緊急避妊薬なのです。

また、相手が好きだったから断れなかったけれど避妊してくれなかった、よくわからないまま強引に性行為に持ち込まれた、レイプなど、緊急避妊薬が必要になる状況はいろいろと考えられます。そしてそれは、すべて緊迫した状況です。

緊急避妊薬を求めている人たちの多くは、自分を守る権利とその方法を求めているだけです。いままさに怯えている女性の肩にそっと手を置いてあげてほしいと思います。

日本社会において、決定権を持っているのは主に男性です。女性の緊急避妊薬なんてどうでもいいことなのかもしれません。「所詮女の問題だ」と片付けることも出来ますし、そうやって後回しにされてきました。

でも私たちは今、声を上げています。自分の身を守る手段が欲しいと訴えています。どうか聞いてください。対処すべきリスクの順番を間違えないでください。今この瞬間、望まない妊娠への不安で立ち尽くしている女性がいることに目を向けてください。

私は、何よりも彼が私と一緒に自分事として避妊のことを考えてくれたこと、そして薬局の方も病院の方も当然のように私を守ることを一番に考えてくれていたことを忘れません。

近い将来、私たちが自分の身を守る手段を増やすことを保証してもらえるように祈っています。

藤木 桜子(ライター)

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