電車内で「電話、かけた方がいいですよ」 思い やり感じた忘れられない出来事

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斎藤さんは、数年前の冬、JR長崎線の電車内でのエピソードを紹介した。

夫婦と思われる男女が「病院まで遠いよ。最期の会話になるかもしれない」「そんなことない。間に合う」と小声ながらも切羽詰まった様子で言い争っていた。会話を聞いた斎藤さんは、息を引き取ろうとする父親の臨終の場に、男性が間に合わない状況だと理解した。

斎藤さんは久留米大病院(福岡県久留米市)に勤務し、当時は末期がん患者を診る緩和ケア病棟を担当。患者の家族には、後悔しないように最期の声かけや気持ちを伝えるように促してきた。

その経験から男女を静観できず、近づこうとしたとき、ある女性が「電話、かけた方がいいですよ」と声をかけ、他の乗客もうなずいた。

背中を押された男性は電話をかけ「おやじが一生懸命働いてくれたから俺たちは少しもひもじい思いをしなかったよ。心配しないでいいから。本当にありがとう」とおえつを抑えながら感謝を述べた。

斎藤さんは胸が温かくなり、電車内にいたみんなが「看護」をしていたと感じたという。最優秀賞を受け「評価してもらい、うれしかった」と語った。

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