
これは、とても興味深く読ませてもらいました。
人生最後のゴールをどのように迎えることができるのかって、介護しながら、いつも考えています。
この試みは、とても胸部深いです。
形は違えど、工夫しだい、発想の転換で、いろいろなことが、できるということですね。
「“普通に生活している”という感覚が得られない」。入居者の不満から変革した、介護施設がオランダにある。スーパーマーケットや映画館もある街のようなつくりの施設で、認知症患者だけが暮らす。“普通の暮らし”をどのように実現しているのか、取材した。(構成・文:殿井悠子/取材・撮影:ユイキヨミ/Yahoo!ニュース 特集編集部)
150の質問リストでライフスタイルを見極める
1968年、世界で初めて長期ケア(介護・医療)保険制度(AWBZ)を制定したオランダ。そんな介護先進国オランダには、ユニークで革新的な介護施設がある。認知症の人だけが暮らす“街”、「デ・ホーヘワイク」だ。
「デ・ホーヘワイク」は、オランダの首都アムステルダムから南へ25キロほど離れた郊外にある。1.5ヘクタールの敷地にカフェやスーパーマーケット、映画館、噴水広場などの共有スペースが点在し、街のようなつくりになっている。
敷地内の様子。利用料金は1カ月あたり7200ユーロ。住人は長期医療保険と自己負担でまかなう。自己負担の金額は国の機関が査定し、150〜2346ユーロ。オランダでは標準的な料金だ。入居までの待機期間は6〜8カ月。入居者数は現在169人で、働くスタッフはフルタイム当量200人のほか、ボランティアが140人いる
母体は、複数の高齢者施設を運営する「VIVIUM介護グループ」という民間企業だ。入居資格は、24時間介護を必要とする重度の認知症であること。例外的なケースを除き、入居者は亡くなるまでここで暮らす。
住居エリアに27棟の建物があり、1棟につき定員は6〜7人。特徴は、ライフスタイル別に棟を区切っていることだ。
VIVIUMグループのシニアアドバイザー、ジャネッテ・スピーリングさんはこう言う。
「心理学者が、住人(入居者)のインタビューを通して、7つのライフスタイルがあることを把握しました。同じスタイルの人たちは、似通った食習慣をもち、音楽やインテリアなどにも共通の好みがある。こうした特徴を生活に取り入れると、住人に安心感をもたらします。逆に言えば、異なるスタイルの人たちと同居したり、自分に合わないスタイルで暮らしたりすると、ストレスになり、できることを減らしてしまう場合もあるのです」
慣れ親しんだ環境が整った“家”で、これまでと同じ暮らしをする。今までと似た環境であれば、認知症であってもできることがたくさんある。
入居前にまず、住人の家族が150の質問リストに記入する。リストは、コンサルタント会社のリサーチ結果とホーヘワイクの実績を合わせて作成したものだ。さらにスタッフの自宅訪問や家族との数回にわたる話し合いを経て、その人のライフスタイルを見極める。
設立当初、7つにグループ分けされていたライフスタイルは、社会の変化に伴い、現在は4つになっている。リッチなスタイル、芸術好きな人が多い文化的なスタイル、個人主義の人が多い都会的なスタイル、オランダの伝統的な暮らしを重んじるアットホームなスタイルだ。
例えば、伝統的なライフスタイルの住人は労働階級の人が多く、日々の家事などを規則的に行う傾向がある。食事は、ジャガイモや肉を煮込んだものなど典型的なオランダ料理がメインで、部屋にはオランダの家族がよく遊ぶボードゲームやカードゲームが置いてある。キリスト教徒の割合が高く、宗教にも配慮している。
“普通”ほど実現が難しいことはない
「デ・ホーヘワイク」が設立されたのは1992年だが、現在のように街のようなつくりになり、住居がライフスタイル別に分けられたのは、2009年のことだ。変革のきっかけは、住人たちから出た「“普通に生活している”という感覚が得られない」という不満だった。
ジャネッテさんはこう語る。
「住人からは、館内や生活形態に“介護施設”という雰囲気が出ていることが、不満の一つに挙げられました。医療面は万全なのに入居者不足に悩まされていたのはそのせいもあったかもしれません」
住人にとって一番大切なことは、自分が抱える病気と常に向き合うのではなく、できる限りこれまでと同じ、つまり“普通”の生活スタイルを保ち、楽しみのある日々を送ることだとジェネッテさんは気付いた。