「中国式EC」が世界を席巻 アマゾンとw ishで中国からの出店が大半に

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米EC大手アマゾンに出店するショップの総数と、年間取引額100万ドル(約1億円)以上のショップ数について、中国のショップが昨年1月に初めて米国を上回った。さらに今年1月、新規出店の75%は中国のショップだった。中国のショップがアマゾンを占領したと言っても過言ではない。

ECは米国で誕生した。アマゾン、eBayは1995年設立、アマゾンは2004年に中国に進出している。当時、中国ではアリババ傘下のECモール「タオバオ(淘宝網)」は設立して1年、中国EC大手「京東商城(JD.com)」はサービスを開始したばかりで、一方アマゾンは時価総額が160億ドル(約1兆6800億円)を超えていた。

中国のベンチャーキャピタルは海外で成功した起業モデルの導入を図っている最中で、「Copy to China」の時代が幕を開けた。例えば「人人網(renren. com)」はFacebook、「優酷(Youku)」はYoutube、「Weibo(微博)」はTwitter、「美団(Meituan)」はGrouponを模倣した。

しかし、2019年には年間取引額が1000億元(約1兆6000億円)クラスの米EC企業が4社に対し中国は6社、1兆元(約16兆円)クラスは米1社に対し中国は3社になった。

2020年末、米国では新興ECの「Doordash」、「Wish」が上場。Doordashはデリバリー会社で、目論見書に記載されている事業内容は美団にかなり近い。低価格帯のECであるWishは出店業者の大部分が中国だ。

中国ではこの20年近くでインターネットが急速に発達し、中国の経験を輸出する「copy from china」の時代が到来した。

■ 米国を追い越す
Copy to Chinaの波は2010年に小さなピークに達する。この年、米国で新規上場する中国のIT企業数は過去最高の40社に達し、米国のIPOの26%を占めた。同年、全出の人人網をはじめ、動画共有サイト「優酷土豆(Youku Tudou)」、中国のアマゾンと呼ばれた「当当網(Dangdang)」が相次いで上場した。

中国のベンチャー投資市場では人民元のホットマネーが増え、中国の創業者は海外のモデルを導入するよりも中国に適したビジネスモデルを打ち立てるようになった。

京東集団の劉強東 CEOは上場時、「京東は中国のアマゾンではない」と強調している。

「アリペイ(支付宝)」に代表されるモバイル決済サービスは、中国の特色のあるインターネットを表す最も良い例だろう。

アリペイは、2002年にeBayを買収したPayPalにヒントを得ている。ECの台頭で急速に成長したPayPalとアリペイは、今や売上高、利益の規模で肩を並べるが、収益モデルは異にする。

アリペイの利益の源泉は、デジタル決済、加盟店へのサービス(加盟店から受け取る取引サービス料が2019年は売上高の44%を占める)とデジタル金融プラットフォーム(クレジットサービス「花唄(Ant Credit Pay)」とキャッシング サービス「借唄(Ant Cash Now)」などの消費者金融業務の技術サービス料は売上高の56%)などの付加価値サービスだ。一方、米国では決済業界の高いサービス料率は広く受け入れられているため、Paypalの売上高の90%は取引手数料だ。

モバイル決済が米国よりも中国で急速に普及したのは、中国ではクレジットカードが米国ほど普及していなかったためだ。中国はクレジットカードを飛び越えて直接モバイル決済時代に入った。

逆に米国ではパソコン、クレジットカード、生活サービスの業界が相当成熟しており、インターネット+アルファの事業が成長する土壌が整っていなかった。

中国モデルを輸出

2020年12月、Wishがナスダックに上場。その目論見書の事業目的は、中国の共同購入EC「Pinduoduo」によく似ている。Wishが「米国版Pinduoduo」と呼ばれるのも無理はない。

中国の越境ECが大きく拡大したのは2013年で、中国の格安商品を大量に扱うWishはまさに同年から急成長した。EC専門の調査会社「Marketplace Pulse」によると、Wishのショップのうち94%は中国からの出店で、米国は4%にすぎないという。Wishの100億ドル(約1兆円)の時価総額は中国のショップのおかげと言える。

Wishの運営モデルはPinduoduoに似ている。モバイル端末のアプリを使い、小都市や農村の市場を狙い、ゲームの要素を運営モデルに取り入れてユーザーのロイヤリティを高め、コンバージョン率向上を図っている。

両社は集客方法も似ている。Pinduoduoの台頭はWeChatと切っても切れず、Wishが頼るのはFacebookだ。Wishが成長し始めた頃は90%以上のアクセスはFacebook経由だった。WishはFacebookなどのSNSで格安商品を扱ってユーザーを引きつけ、ユーザー同士による共同購入を推進し、友達による推薦・口コミという形で展開していく。

Pinduoduoの2019年の売上高は301億元(約4900億円)でWishの133億元(約2200億円)の2倍以上だが、Pinduoduoの損失70億元(約1100億円)に対し、Wishの損失は9億元(約150億円)だった。月間アクティブユーザーは、Pinduoduoの6億5000万人に対してWishは100以上の国で1億人を上回る。しかし、時価総額は差が大きくPinduoduoの2000億ドル(約21兆円)以上に対しWishは145億ドル(約1兆5000億円)だ。

ここ2年中国で勢いを増すライブコマースも同様に米国に伝わっている。アマゾンはアプリにAmazon Liveの機能を追加し、さらにタオバオ傘下のライブ配信プラットフォーム「淘宝直播(タオバオライブ)」に似たアプリのAmazon Live Creatorをリリース。GoogleはShoploop、Facebookも傘下の三つのプラットフォームであるFacebook、Whatsapp、Instagramからショッピングができる。

■ 終わりに
中国の巨大な内需市場、全業種にわたる製造業、改善が進む物流スピード、全国を網羅する4G通信のネットワークなどがECの発展と経験の輸出を支えていることは間違いない。

中国は巨大な消費市場、労働力市場であり、データ駆動を基盤とし、常にアップグレードが必要なインターネット産業にとって最適の環境となっている。

中国人は世界最大のEC企業を生み出した。生活がより便利になり、製品、ひいては経営モデルも世界に輸出している。その背後にいる生産ラインの労働者、倉庫で商品を扱う業者、配達員、徹夜で働くプログラマーのおかげだ。中国のECの奇跡は彼らが創造したものであり、他の国は真似できない。

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