介護首位「ニチイ学館」が株式非公開に踏み切った複雑事情

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「総帥」と呼ばれた創業者の死からわずか1年足らず――介護業界首位のニチイ学館が投資ファンドの米ベインキャピタルと組んでMBO(経営陣が参加する企業買収)を実施、株式の非公開化に踏み切る。ベイン全額出資の受け皿会社を通じて11日からTOB(株式公開買い付け)を開始、最終的に全株取得を目指す。

ニチイ学館は会長在任のまま昨年9月に83歳で死去した寺田明彦氏が1968年創立した。95年上場後の今も寺田家の資産管理会社が発行株の24・76%を保有するほか、寺田一族で約44%の株式を握っているとされる。

MBOに先駆けてベインはまず、この資産管理会社「明和」株を244億円で買収。発行株の41・9%のニチイ学館株を買い付けられれば株主総会での特別決議を経て株式併合が可能となる枠組みを構築した上、6月22日までを期限にTOBを進める。

TOB価格は5月7日のニチイ学館株の終値1094円に37%のプレミアムを乗せた1株当たり1500円。寺田一族はすでに「TOBに応じる意向を示している」という。全株取得の場合、新株予約権買い取り分と合わせ買収総額は1000億円規模となる見込み。買収資金は3メガバンクと野村グループからの借り入れで調達する。寺田一族はTOB成立後の受け皿会社に再投資する方向で調整中だ。

ニチイ学館の2020年3月期決算は介護や医療事務受託などの堅調に支えられ、売上高が前期比3・5%増の2979億円、営業利益が同21・2%増の121億円と増収増益を記録した。それでも非公開化に踏み切るのは人手不足で給与水準の引き上げなどを余儀なくされ、今後、事業環境が一段と厳しさを増すとみられるためだ。

ドミナント化によるシェア拡大を狙って「M&Aを積極化させる思惑もある」(事情通)。

介護業界は小規模事業者が乱立する。上場企業に要求される内部統制の仕組みなどが出来上がっていないところも多く、「株式を公開したままでは機動的なM&Aの足かせになりかねない」(同)というわけだ。果たして「第二の創業」と相成るか否か。

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